アメリカ人、アルフレッド少年は大変な危機にひんしていた。父の都合で9月に入学したイングランドの公立高校が大変な不良校だったからだ。最初に、イングランドの学校に入学させると聞いたときは、寄宿舎を想像していた。なのに。

「はーいこんにちは新入生諸君!何故か保健のフランシス先生が校長に変わってお話だよ!先に言っておくがお前らもしったの通り女の子はこの学校にいねぇ。男子高だからな。ついでに、女の先生もいねぇ。ゆめゆめ俺の保健室に連れ込んでいいこと出来るなんて思うなよ。あ、だからって可愛い男の子に手をつけんじゃねーぞ、やるなら学校の外でやれ。まぁ、お前たちは性にうえたオオカミだから気持ちは分かるがな。そのせいか毎年、3回は俺を襲うセンスある大馬鹿ものが現れるけど、そのたびに俺は返り討ちにしてやったぜ!今年も勇気ある挑戦者諸君を薔薇をくわて待ってやる。つーわけで、喧嘩で怪我したときは保健室くんな。病院いけ、どうせ俺じゃ治せねぇケガしかしねぇんだから。入学の心得は以上。解散!」

俺の青春は終わった。彼は打ちひしがれた。エマ・●トソンみたいな彼女を作りたかったのに!!周りを見渡すと、ピンク色のモヒカンをしている生徒、すでになぜか鉄パイプを持っている生徒がいる。
溜息をつくと、急に後ろからポン、と肩を叩かれた。
強面のガチムチ系の青年が立っていた。

「いい体格をしているな。レスリング部に入らないか?」
ドイツ訛りのことばに「いや、俺は野球部に入るつもりだから……」というと、「この学校に野球部なんぞないぞ」と言われた。
「え、」

打ちひしがれるもなく今度は別の所からひっぱられてた。
「おいおい、ルッツ!抜け駆けはなしだぜ。こいつは我がボクシング部が貰って行く!」
嫌俺何もいてってないんだけど、と持っていたらたっという間に先輩方に囲まれた。
「我が柔道部にこい、じゃなきゃ明日からお前の命はねぇぞ」
「いや、うちのカポエラに」
勧誘の波に会いながらアルフレッドは教室目指して走り出した。そうすると、強面の方々がみんないっせいについてきたのだ。

「おいこら待てぇ!!」
「いやだあああああ……」
「諦めるんだアルフレッド。この学校には格闘部しかない」
「知らないよ!っていうかなんで君、俺の名前知ってるんだよ」
ルッツ、と呼ばれた先輩は猛スピードで追いかけながら「期待の新人は前からチェックするのは当然だ!」と嫌な一言をいった。
玄関を抜け、校舎の一回に入ろうともなお彼等は追いかけてくる。っていうかあんたら授業とかは?

(と、とにかくどこかに逃げ込まないと……!!て、あれ)

「生徒会」
とっさに曲がった角の教室にそう書かれた札が見えた。

(真っ当そう!!)
命からがらの思いでアルフレッドはそのドアをあけた。
「失礼しまあああああああす!誰かいたら助けてくれよ!」

(って人いない!?)
いや、いた。
その教室は、がらん、としていて、ぼろぼろのソファと机、それから何故だかこの学校に似合わず観葉植物が置かれている。そのソファに、一人の青年が、雑誌を顔に乗せたまま寝そべっていた。

「……誰だ、てめぇ。入会希望か?」

ゆっくりと起き上った青年は、アルフレッドよりも少しだけ背が引く、体格はずいぶんと貧相だった。彼制服をきっちり着込んでいて、おそらく、生徒役員であることを指す、皆の紺地とは違う、金色のタイをつけたいた。それを見て、アルフレッドは安堵の溜息をついた。

「あ、うん、その……」
アルフレッドが何かいいきらないうちに、目の前の彼が口を開いた。
「OK、じゃぁ俺と勝負しろや」

What?

「見ねえ面だな、新入生か。入学早々ここにくるたぇ、いい度胸じゃねぇか。名前をいえ」
「あ、アルフレッド・F・ジョーンズ……っていうか、多分、なにか勘違い、」
を、という前に、彼の姿が、消えた。
「わ!」
目の前に飛んできた足に思い切り後づさんでしゃがんだ。ほぼ同時に、バン!と音をたてて、アルフレッドの後ろにあった教室のドアが衝動で外れた。


(わかんないけど逃げないと!)

アルフレッドはすぐ様たち上がって走り出した。野球で鍛えた足には、少し自信があった。
「おいてめぇ待て!喧嘩しに来て逃げんじゃねぇ!」

(しにきてないよ!)

「ふむ……大変そうだなアルフレッド。まさかお前が生徒会希望だったとは」
「いや、知らないよ!っていうかなんで君一緒に走ってるのさ?!」
「俺は、2年でのルートヴィヒという。お前が、生徒会志望だったとはしらなかった。すまない」
いや、すまないじゃなくて、これはなんなのさ!と、走りながらアルフレッドが尋ねると、ルートヴィヒは本当に驚いたように目を丸くした。
「お前、まさか本当にしらなくてあの部屋に入ったのか……?」
「新入生なんだけど、俺」
眉間に皺をよせてやたらゴツイ男、ルートヴィヒは解説した。
彼は、かつてこの学校を牛耳っていた猛者をすべてのして生徒会長になった男だと。生徒会とはすなわち、この学校で最も強きものたちの場所。しかし、いまはあの神聖なる部屋には彼しか入れないのだという……。
「あの部屋に入ること、それ即ち会長への挑戦を意味する。もっとも会長職は、英国らしくスポーツが学校代表であり成績も加味されるが」
「いや、素行は」
「それはこの学校なのでな。というわけでグランドだ。奴は凶暴だ、気をつけろ。健闘を祈る」
ガッデーム。アンタ助ける気はないのかい。
いつの間にか周りにはギャラリーがいた。
「へ……生意気だなてめぇ。広いところでやりあおうってか。そのアクセント、アメリカ人だろ?」
件の生徒会長は、面白そうに笑った。
「いや、これは様々な勘違いと無知が」
「今さらびびったか?問答無用」

(どうやったら逃げられるんだよ!)

彼の足が容赦なくアルフレッドの膝をめがけて振り下ろされた。それを身をよじってなんとかしてかわす。早い。

「お、あの新入生、アーサーさんの蹴りをかわした!」

いや、でもこれくらったら、多分足の骨折れるよね?俺、野球部の時レギュラー停止になっちゃうから喧嘩したことないんだよ!逃げをずっと決め込んでいると、不意にアルフレッドの眼鏡がはずれた。
その眼鏡が床に落ちないよう、にアルフレッドが思わず手を伸ばしたその瞬間。

「ゴフッ」

バランスを崩したアルフレッドが、アーサーを押さえつけるような形になりそのまま倒れこんだ。アーサーは地面に強く頭を打った。
「えっと、わ、ごめん!」
大したダメージでもないだろう、しかしアーサーはなかなか起き上がらない。もしかして、うちどころが悪かったのだろうか?
ギャラリーが沈黙する。あれ、でも俺多分、何も悪いことしてない、よ、ね?

しばらくして、アーサーがむくりと体を起こしていった。

「……惚れたぜ」

は?

そのまま、彼は起き上がって言った。頭からは血が流れていて、それが砂に混じって彼の金髪と顔を汚していた。


「会長の座は譲れねぇが最強の座は譲ってやる」

そう言って彼は立ちあがって、アルフレッドにもたれかかってきた。
「おい、てめぇ、アルフレッド。あ……少し怪我してんな。保健室連れてってやる。今日から俺はお前の舎弟だ」


は、はいーーーーーーーーーーーーーーーーー????

アルフレッドの青春がはじまった。