なんでこの人はこんなにエロいんだろう、と最中にいつも思う。
肋骨の浮いた胸が、は、は、と短くなんどもイギリスは息を吐く。中途半端に服をつけたまま、今、何回目だっけ。数えてないからわからない。俺は、頭の上で緩く手錠に締められた彼の手首を、手錠ごと出来るだけ優しく触って、微笑みかけた。けれど、白い布地に阻まれて、彼の眼が俺を見ることは叶わなかった。だから、変わりに、彼のまとめられた両腕を俺の口に寄せて、恭しく、その指にキスをした。そうするとイギリスは、馬鹿、と、芯が解けそうなくらい優しい声を出して、その指が俺の頬を微かになでた。

「好きだよ」

体の熱をはくように、その指にささやいたら、爪が顔を少し強く掻いた。見られないのは分っていたけど、俺はそれでも笑った。
布の下の緑の目は一体、今何を見ているんだろう。それもわからない。けれど、それを哀しいとも思わない。違う事を、辛いとか哀しいとは思わない。ゆっくり、また腕をイギリスの頭の上にもどしてから、鎖骨の下を舐めて吸うと、俺の胸板と、イギリスの胸板が触れ合う。それにまた、イギリスが、声を出さずに身じろいだ。お互いの体が熱い。それで十分だ。
手錠と目隠しなんて、別段はじめてでもなんでもないけど、写真とりたいとか言ったら怒るかなぁ、とか随分な事を考えた。君は、白いシャツを前だけ肌蹴た格好でさ。俺は、中途半端に上だけ脱いで下のスリーラインのズボンははいたままでさ。でも、そういうのが悪くない。彼の体に鎖骨に俺がつけた痕、俺の腹に彼がつけたあとを見て嬉しく思う。
小さく、だけどイギリスが、アメリカって呼んだ。俺はやっぱり、笑ったまま、彼の、頬に、弱い首筋に、耳の下に、柔らかく口を寄せる。そうすると、イギリスは、弱い箇所を弱く刺激されて、微かに、けれど、堪え切れぬといった風に、足の指先まで力を込めて身じろいで、小さく呻く。それが好きだ。
いれていい?と色気もそっけもなく聞くと、腰に巻きついた彼の足が俺の背中をトンと蹴る。毎度ながら、酷い返事だ。でも、それが良いんだ。
手を添えながら無理せずに入れていく。入れると、イギリスの体が、綺麗にしなって、一際大きく息をつく。力を抜くように、ゆっくり何度も何度も。下手に大きな喘ぎよりも、小さく溶けた声がまじるその呼吸が色っぽいと思う。「ちゃんと、息吸って」と髪をなでたら、掠れた声で「無理だ」とだけ返ってきた。ならしてあるから、それでもすんなり受け入れた。全部入れると、もう、ただ愛おしいで一杯になる。少なくとも、今この時間、全てを御破算にしてもいいと思おう。
動くとまた、彼が、あ、と息をついた。そこに混じる声が、本の少しだけ大きくなる。奥歯を噛んで耐えるようにしながら、それでも音に漏れる。荒い呼吸がお互いの顔にかかる。俺も、く、と呻く。彼の足が、俺の腰に巻きつく力が強くなる。クラクラして、目の前がチカチカする。

「――!」

もっと。そう思ったタイミングで、イギリスが堪えたのが、我慢し切れなかったような声をだした。ドン、ドン、と足で俺の背中を叩く。何、と首筋を舐めて耳の近くで囁くと、それに顔を背けるように首を振った。
「……手錠外せ」
目隠しされたまま(って俺が合意の下にしたんだけどさ)イギリスは言う。俺は腰を動かしながら、右手で枕もとのキーを手繰り寄せて、手錠を外す。イギリスの手首は手錠のあとで少し赤くなっていた。それを、舐めるか食べるかしたいな。思ったのと同時に、イギリスが自分で目隠しを上にずらして外し、俺の首に腕を伸ばした。翠の眼。そのまま彼の顔が寄ってきて眼を瞑ってキスをした。いつも、「今キスしたら絶対に気持ちいい」っていうタイミングでキスをする。だから、やっぱりすごく気持ちよかった。一度口を離す。繋がったままで、一瞬、彼の口から声が漏れる。また口付ける。そうしてぐちゃぐちゃになる。溺れてるにしては、多分、互いにあまりに気持ちいい。

「好きだよ」

もう一度言うと、彼が自分の体の全てを強く締め付ける。帰ってきたのは、Thank you, my dear.